〔詩〕その子は もう


その子は まだ ことばをもたないけれど
だまって 風のかたむきを知っている

朝の光のなかで すこしうつむき
ぬれた葉っぱを 一枚 ひろいあげた

大人の目には 遊びにしか見えないそれが
その子の「いま」すべてだった

かけがえのない問いが
かれの 見つめる先に ひっそりと立っていた

その子は もう 
だれの教えもなく
いのち にふれていた

土のぬくもりを 手のひらにうけ
名もなき鳥の影を 胸にしまいこみ

まだ「学び」と名づけられぬ
「生」の深みに じぶんの舟を浮かべていた

その子は もう
たましいと 話していた




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