「せんせい」にとって
教えないことも とっても大事
難しけど とっても大事
ひとりの子が、窓の外を見つめてた
もうひとりは、鉛筆をじっと見つめてた
なにも起こっていないように見える時間
でも そこには確かな「 」があった
それは 外に向かう言葉ではなく
内にふれてゆく時間だった
誰にも語られなかった気持ちが
誰にも知られずに そっと揺れている
その子は やがてぽつりと語った
「きのうね、おばあちゃんが夢に出てきた」
誰に向けた言葉でもない
けれど 教室が たしかにそれを受けとめた
誰も笑わず 遮らず ただ 耳を澄ませた
沈黙の中で
口を閉じ 沈黙とともに 教えることをやめたとき
わたしは ほんとうの「学び」のそばにいた
それは予定通りにいかない
評価もできず 言葉にならない
けれど それはたしかに そこに…
ひとりの子が 自分の世界を育てる瞬間
「せんせい」であるってことは
大きな声で知識を運ぶことじゃない
むしろ 小さな声に耳を澄ます
風のような 影のような存在になることじゃないかな
教えることをやめたとき
わたしは 子どものまえに 静かに立っていた